かつて日本のスーパーマーケット大手のダイエーが経営危機に陥ったとき、「大きすぎてつぶせない」(too big to fail) という言葉が脚光を浴びた事がありました。
今、米国の自動車メーカー GM の経営危機においても全く同じ言葉がささやかれています。
今回の危機は、もちろんサブプライムローン問題に端を発した金融崩壊と景気低迷があるのは当然ながら、GM 自体の「おごり」も大きな原因ではないかと思います。
アメリカのビッグ3と呼ばれる自動車メーカー各社は、低燃費の小型車や、代替燃料車の開発には消極的な態度を取り続けてきたし、工場の設備は老朽化していて新規の設備投資も不十分である上、昔ながらの大型車中心のラインナップしかありません。経営努力は不十分であったという印象はぬぐえません。
そして、次世代低燃費車の開発を怠ってきたツケが今回ってきているのです。
筆者が数年前ロサンゼルスでレンタカーを借りた際、一番小さな車を予約していたにもかかわらず、駐車場に行ってみると、日本の3ナンバー車を思わせるような巨大な車でした。キャデラックの新車だとか...
「あの~もうちょっと小さい車はないんでしょうか?」
とカウンターで聞くと、
「これが一番小さいんですよ。でも乗り心地はバッチリですよ!」
と黒人のお姉さんに営業スマイルでかわされてしまいました。
インターステートハイウェーに乗ってから、周りの車を見ると、モンスターみたいな大型 SUV がバリバリ走っていました。「地球温暖化に大きく貢献中だなぁ...」としみじみ感じたものです。それでも時々トヨタのプリウス(ハイブリッド車)も走っていたりして、何となくホッとしたりもしてました。
そういえば、燃料浪費型の大型SUV車を所有することは「テロに荷担することだ」という主張もかつてありましたね。
SUV所有者はテロを支援している~波紋巻き起こす過激CMの論理
ガソリンをたくさん使う車に乗ることで→産油国を潤し→テロリストの資金源となっている
という論理でしたが、まぁこれも一理あるような気がします。
原油価格高騰前の米国人なら、こうした gas guzzler (ガソリン消費量の多い大型自動車)でも喜んで買ったでしょう。しかし、ガソリン価格が倍に高騰し、日常の移動手段として車に依存せざるを得ない米国の消費者たちが、低燃費の小型車に目が向いたのも無理はありません。
鈍感な米国人たちにもやっと環境に配慮したライフスタイルを意識するチャンスがやってきたのです。これはこれでいいことなのですが、米国の自動車メーカーには最悪の事態が...
11月3日集計された10月の米新車販売台数によると、米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が前年同月比45.4%減となり、GM幹部が「人口の増加を調整すると、第二次世界大戦後で最悪の月」と嘆くほど壊滅的な打撃を受けた
出典: 金融危機の悪循環 GM呑む
参考: なりふり構わぬ救済要請 ビッグ3に厳しい視線
トヨタなど日本勢も20%超減となってはいますが、日本勢は黒字を確保できる模様。GM は、販売台数が半分に落ち込むという異常事態に加え、販売店への販売報奨金の支払いも遅れていると聞くし、まさに「つぶれるのは時間の問題」という気がします。
放漫経営のツケを税金で補うことには、アメリカでも批判が高まっています。オバマ新大統領はビッグ3の支援に前向きらしいですが、どこまで国民の理解が得られるでしょうか?
GM 破綻による社会的影響が甚大だというのも分かりますが、個人的にはダメな企業は一度つぶれた方がいいのではないかと思います。
米国の投資家、ジム・ロジャース氏の最近の発言にはちょっと注目しています。
90年代の日本政府は、企業倒産を強引に防ごうとして救済策を発動した結果、もはや生命力を失った銀行や企業の「しかばね」を大量に生み出した。「倒産させるべき企業は倒産させる」ことが肝要で、経済システムさえ正常ならば「困難な状況であればあるほど、資金を無能な企業から有能な企業に向かわせる」ことが必要になる
GM がつぶれて短期的に悪影響があったとしても、数年後には健全な企業群によって米国の自動車産業は再起可能だと思うのです。今後の米政府の対応に注目したいと思います。

