筆者がタイに引っ越してきて6年が経とうとしています。
私は、日頃から「日本人は○○なのに、タイ人は××」というような表現をなるべく避けるようにしています。人種の一部の特質をとらえて一般化することは、往々にして人種差別論に発展する場合が多く、好ましい事ではありません。
たとえば「日本人は勤勉だが、タイ人は怠け者だ」という意見を時々聞きますが、これはあまり正確な表現ではありません。日本人にも怠け者はいっぱいいますし、タイ人も(特に華僑系は)勤勉な方が多いですからね。
正確を期すならば「日本人は勤勉な人の割合が高いが、タイ人は怠け者の割合が高い」でしょう。
しかし世界にはタイよりももっと怠け者の割合が高い国があるのです。世界一ぐうたらな国とは一体どこなのでしょうか?
怠け具合というのは計量化不可能ですので、こういうのはギネスブックなどにも載っていません。
答えはナウルです。
ナウルは、南太平洋に浮かぶ島国で、面積はわずか21平方キロ(世界で227位)しかありません。人口は13000人程度(2008年、世界で212位)。世界でも最も小さな国の一つです。
ナウルは、他の太平洋の島々同様にリン鉱石が豊富に存在し、経済はこのリン鉱石の輸出に大きく依存していました。
ナウルのリン鉱石は、珊瑚礁に、海鳥の死骸・糞・エサの魚・卵の殻などが長期間(数千年~数万年)堆積して化石化したものです。鳥糞石などと呼ばれることもあります。ちょっと「ばっちい」感じですね。ちなみにリン鉱石は、工業原料のリンに利用されます。
しかしどんな鉱脈も、掘り尽くせばいつかはなくなります。ナウルでは、この危機が1990年代末に起こりました。リン鉱石が完全に枯渇してしまい、国家経済は破綻の危機に立たされました、というか実際に破綻してしまったのです。
ナウルの人びとは、リン鉱石の採掘が始まった20世紀初頭から実に100年近くにわたって、鉱山会社から受け取る土地使用料で「食う寝る遊ぶ」の暮らしを続けてきました。
国民はまったく働かなくても良かったのです。というか働く意欲がまったくないらしい... 労働は外国からの出稼ぎ労働者に任せ、食事を作ることもなくすべて島内の中華料理店で済ませる日々。教育や医療もすべて無料で、税金もありません。
本来なら、リン鉱石の枯渇および経済の破綻が予想されるのであれば、代替の産業を事前に育成しておくべきでしょう。しかし、1世紀にわたってぐうたらな暮らしを続けた人びとがそんな器用な真似をできるはずがありません。
それでもオーストラリアにオフィスビルを建設してみたり、グアムにホテルを造ってみたり(実際には日本企業に貸し出している。全日空ホテルらしいです)、航空会社を作っていきなり日本にフライトを開設してみたりしたようですが(鹿児島&那覇線)、いずれも放漫経営でうまくいきませんでした。航空会社に至っては、飛行機が差し押さえられて運行停止に陥ってしまいました。
そんなわけで現在の失業率は90%。リン鉱石が出なくなってからは、海外からの移民も本国に帰ってしまい、人口も減少。現在は外国からの援助に頼らざるを得ない状況が続いています。オーストラリアや日本が主な援助国です。
タックスヘイブンを目指して自由経済地域になろうとしたこともありますが、アメリカや国際機関からマネーロンダリングの温床として敵視され、結局諦めざるを得ない状況に...
以前は東京にもナウル総領事館があったのですが、財政難で閉鎖になってしまいました。
21世紀に入ってからは政治状況も流動化し、毎年のように政権交代が行われています。
南国の島なら観光地として売り出しても良さそうですが、ホテルが2軒しかない上、そのホテルに(収入を目的に)アフガン難民などを受け入れたりしていた時期もあって、大量の観光客を受け入れることも難しいのが実情です。
なんか八方ふさがりのようですが、それでもナウルの人びとは幸せにぐうたら生活を続けているようです。おかげでナウルにはもう一つ記録ができてしまいました。
「世界一デブが多い国」
人口の90%は、世界平均BMIより高い数値となっているそうです。
ナウルに比べれば... タイ人はなんて勤勉なんでしょう! タイで企業を営む筆者は、タイ人従業員の怠けぶりを慨嘆する事もしばしばですが、そんなときは「それでもナウル人よりはマシなんだ」と自分を慰めつつ、今後も頑張って行こうと思います。

